日本語教育能力検定試験V問題 10 第二言語ダイニゲンゴ習得シュウトク 【はま先生解説センセイカイセツ のんびり日本語教師ニホンゴキョウシ
  トイ1 自然習得シゼンシュウトク環境カンキョウにおけるインターアクションの特徴トクチョウべよ   不正解フセイカイ 問1の解き方【自然習得環境と教室習得環境の違い】 自然習得とは、実際に社会的な場面で言葉を学ぶことです。          
インターアクションとはやり取りのことです。 教室とは違って文法について詳しく勉強できないんですが、          
1 母語ボゴ話者ワシャ言語ゲンゴ形式ケイシキ正確セイカクさを重視ジュウシし、頻繁ヒンパンアヤマりを訂正テイセイする。 自然習得環境と教室習得環境のやり取りの違い。 会話やコミュニケーション能力が伸びやすいです。          
2 母語話者ボゴワシャ学習者ガクシュウシャのレベルよりややウエ文法項目ブンポウコウモク段階的ダンカイテキれてハナ 日常生活と教室内での会話の違いを考えれば答えが出ます。 その逆が教室習得。教室では文法規則を詳しく学べますが、          
3 母語話者ボゴワシャとの談話ダンワのタイプが多様タヨウでインプットのリョウオオ 会話やコミュニケーション能力は伸びにくく、一長一短です。        
4 母語話者ボゴワシャ質問シツモン学習者ガクシュウシャコタえ、母語話者ボゴワシャ評価ヒョウカするというやりりがオオ 選択肢1
母語話者は言語形式の正確さは重視しません。
「分かりみが深い」など文法的には不正確な言語形式を平気で使います。
また、母語話者は外国人が使う日本語が不正確でも訂正しない人が多いです。
日本人の彼女がいて一緒に住んでいるのに「間違えた日本語を直してくれない」嘆く学習者に何人も会ったことがあります。
頻繁に誤りを訂正するのは教室習得環境です。教師は学習者の誤りを訂正するので。
バツ。
選択肢2
「学習者のレベルよりやや上」などは教師だからわかることです。
これも教室習得環境のことです。
自然環境の母語話者はそこまで気にしませんし、わかりません。
バツ。
選択肢3
自然習得環境、つまり日常生活では色々な母語話者に会うのでタイプが多用です。
また、教室習得環境ではインプットが授業時間に限られますが、
自然習得環境ではいつでもインプットの機会があるので、インプットの量も多くなります。
マル IRE/IRF型とは、教室談話キョウシツダンワ              
選択肢4 @教師が質問を出すことで会話を開始し(Initiation)          
これは教室での教師と学習者のやりとりのことです。 A学習者がそれに返答し(Response)            
選択肢4のようなやり取りのことを何と言いますか? →答えはこちら B学習者の答えに対し教師が評価したり(Evaluation)、フィードバックしたり(Feedback)したりすることです。
選択肢4も教室習得環境です。 え、それって、教室で行われる普通のことでは…          
バツ と思いませんか?                
よって、答えは3 そのとおりです!                
教室でよく行われるやり取りがIRE/IRF型です。            
  トイ2 プロンプトにカンするタダしい記述キジュツエラ     不正解フセイカイ 問2の解き方【プロンプトは正しい発話を促すこと】 リキャストとは、自然な会話の中でさりげなく正しい言い方を伝えること。      
この問題はプロンプトについて知っていれば解けます。 会話の流れを保ったまま適切な表現を提示すること          
1 学習者ガクシュウシャアヤマりにタイして教師キョウシタダしいカタシメすと効果的コウカテキである プロンプトのポイントは2点です。 リキャストの例                
2 学習者ガクシュウシャアヤマったブンタダしくナオさなくても効果的コウカテキである。 @教師は正しい答えを言わない L「私は漢字を読むできます」              
3 学習者ガクシュウシャ現在ゲンザイ言語能力ゲンゴノウリョクえたアヤマりにタイしても効果的コウカテキである A学習者自身が答えを言えるよう促す T「へー。漢字を読むことができますか。いいですね」          
4 学習者ガクシュウシャにとって既習キシュウであってもタダしく使ツカえない項目コウモク効果的コウカテキである。                    
選択肢1 プロンプトとは、学習者自身が間違いに気づき発話を修正できるように促すこと      
「教師が正しい言い方を示す」のはプロンプトではありません。 プロンプトのポイントは2点です。              
バツ @教師は正しい答えを言わない              
選択肢2 A学習者自身が答えを言えるよう促す            
学習者が誤った文を正しく言い直すように促すのがプロンプトです。                    
「学習者が…言い直さなくても効果的」と考えるのであれば、 プロンプトの例:明確化要求、誘導、繰り返し            
プロンプトをする必要はありません。教師がすぐに正しい答えを言えばいいのです。 ・プロンプト(明確化要求)              
バツ L「漢字を読むできます」              
選択肢3 T「え? もう一度お願いします」              
プロンプトは、学習者が自ら誤りに気付かなければなりません。 ・プロンプト(誘導)                
「学習者の現在の言語能力を超えた誤り」の場合は L「漢字を読むできます」              
自ら直すことができないのでプロンプトは効果的ではありません。 T「漢字を読む…?」                
選択肢4 ・プロンプト(繰り返し)              
そのとおりです。 L「漢字を読むできます」              
既習なので本来は知っているはず。自ら言い直すことができるはず。 T「漢字を読むできます?」              
そんなときのプロンプトです。                    
プロンプトは、自分で正しい答えを探さないといけないので、 リキャストは教師が正解を言います。さりげなく直します。          
勉強したのに正しく使えない項目に効果的です。 プロンプトは教師が正解を言いません。学習者が正解にたどり着けるよう促します。      
よって、答えは4                    
直接訂正(明示的訂正) 直接訂正する。            
  トイ3 フォーカス・オン・フォームの背景ハイケイとなるカンガカタ適当テキトウなものをエラ 不正解フセイカイ 問3の解き方【フォーカス・オン・フォーム】 学生「私は漢字を読むできます」              
この問題はフォーカス・オン・フォームについて知っていれば解けます。 先生「違います。「漢字を読むことができます」です」          
1 言語形式ゲンゴケイシキ意味イミ機能キノウムスびつける過程カテイ習得シュウトクこる                    
2 教師キョウシ学習者ガクシュウシャ文法ブンポウについてハナうことで習得シュウトクこる 選択肢1 明示的フィードバックと暗示的フィードバックの違い          
3 言語ゲンゴ意味イミ焦点ショウテンてて学習ガクシュウすることで習得シュウトクスス その通りです。  明示的フィードバックとは、間違っていることをはっきり示すフィードバック。      
4 文法ブンポウ項目コウモク体系的タイケイテキ整理セイリ学習ガクシュウする過程カテイ習得シュウトクスス @言語形式(フォーカス・オン・フォームズ)  直接訂正など。                
A意味・機能(フォーカス・オン・ミーニング)  暗示的フィードバックとは、間違っていることをはっきり示さないフィードバック。    
@+B=フォーカス・オン・フォーム  リキャストなど。                
という公式を覚えてください。
マル
選択肢2
教師と学習者が文法について話し合わなくても習得は起こります。
バツ 内容言語統合型学習(CLIL)
選択肢3
「言語の意味に焦点を当てて学習することで習得が進む」と考えるのは、
フォーカス・オン・ミーニングです。
バツ
選択肢4
「文法項目を体系的に整理し学習することで習得が進む」と
考えるのは形式を重視するフォーカス・オン・フォームズの考え方です。
バツ
よって、答えは1
  トイ4 過剰反歌カジョウハンカレイとして適当テキトウなものをえらべ     正解セイカイ 問4 過剰般化
過剰般化とは、文法的な規則を他のところにも過剰に適用することによって起きる言語内エラーの一種です。
1 恋人コイビト」という漢字カンジこうとして字形ジケイている「変人ヘンジン」と 学習者:富士山はとてもきれかったです。
2 料理リョウリする」という単語タンゴオモせなとき母語ボゴでCookingと 教 師:「きれい」はナ形容詞ですよ。
3 「1kmオヨいでツカれた」とツタえたくて「およんで」と撥音ハツオン規則キソクモチいる 学習者:あっ、そうですね。とてもきれいでした。
4 回転カイテンずし」というをしらず、「マワるすしレストラン」と言葉コトバツク 学習者がナ形容詞「きれい」に対してイ形容詞の活用を適用してます。
これが実は過剰般化という種類の誤りです。
あるルールを本来適当できない別のところに適用した例。
 選択肢1
 字形をちゃんと識別できていなかっただけの誤り。
 あるルールを別のところに使ってるわけではありません。
 選択肢2
 コミュニケーション・ストラテジーの意識的転移と呼ばれるものです。
 母語や他の言語に言い換えてコミュニケーションをどうにか成立させようとする一種の戦略です。
 選択肢3
 五段動詞の末尾が「む」「ぶ」「ぬ」で終わるものは撥音便です。
 噛む → 噛みて → 噛んで
 結ぶ → 結びて → 結んで
 死ぬ → 死にて → 死んで
 「泳ぐ」はイ音便化して「泳いで」が正しいんですが、
 この学習者は撥音便化して「泳んで」と言ってます。あるルールと別のところに適用する。
 これが過剰般化です!
 選択肢4
 似た別の語で表現したり、新しく語を作ったりしてなんとかコミュニケーションを
 成立させようとするのを「言い換え」と言います。コミュニケーション・ストラテジーの一種です。
  トイ5 学習者ガクシュウシャアヤマりが定着テイチャクする場合バアイもある。の記述キジュツとして適当テキトウなものをエラ 正解セイカイ 選択肢1
間違った指導が誤りを定着してしまうことがあります。
1 アヤマりの定着化テイチャクカ目標モクヒョウ言語ゲンゴカンしてけた指導シドウとは無関係ムカンケイである。 例えば、日本語教師:「安い」の否定形は「安いじゃない」です。
2 学習者ガクシュウシャ母語ボゴ既習後キシュウゴ知識チシキアヤマりの定着化テイチャクカカカわる。 と間違った指導をすれば「安いじゃない」という誤りが定着化するおそれがあります。
3 アヤマりの定着化テイチャクカ音声面オンセイメンにはこるが、文法面ブンポウメンにはこらない 「安くない」を教えてあげましょう。
4 上級ジョウキュウレベルで学習ガクシュウした文法ブンポウ項目コウモクアヤマりは定着化テイチャクカしない。 平成29年度日本語教育能力検定試験T問題9問3選択肢4に
「教師の指導に起因する誤り」が登場しています。
選択肢2
学習者の母語が誤りの定着化に関わることを「言語間エラー」
既習語の知識が誤りの定着化に関わることを「言語内エラー」といいます。
正しいです。
選択肢3
「安くない」を「安いじゃない」で覚えてしまうように、誤りの定着化は文法面でも起こります。
選択肢4
上級レベルでも定着化のおそれはあります。
よって、答えは2